牛久入管死亡事件(2017年3月)にかんする法務省の調査報告の批判

Posted on: 2018年 03月 31日

 2017年3月、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の収容者(ベトナム国籍男性)がくも膜下出血で急死しました。この方は死の数日前から容体悪化を訴えていたにもかかわらず、職員に放置されたまま命を落としました。

《参考記事》
 牛久入管でのベトナム人収容者の死亡事件にかんする抗議(2017.04.06)
 【転載】 牛久入管内からの声 ベトナム人収容者の死について(2017.04.06)
 【緊急よびかけ】牛久入管元所長の免職を求めるキャンペーン(2017.05.06)

 この件について2017年12月、法務省が調査報告を公表したことが報道されました。本会が行政文書開示請求により今年2月に取得した、報告書の写しを掲載します。以下をクリックするとPDFが表示されます。

 東日本入国管理センター被収容者死亡事件に関する調査報告書(2017年11月 法務省入国管理局)

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報告書の概要

 報告書の要点をまとめると、事実経過と医師の所見を記したうえで、男性が「死亡に至ることを予見することはできなかった」(10頁)と、また「理論上は、救命できた」かもしれないが「その終期〔死亡にいたるまでの期間〕を特定することが困難である」ので、実際には救命が「困難であった可能性も否定できない」(11頁)としています。こうして報告書は、この件について当局に過失はなかったという結論を導き出しています。要するに、男性が死ぬなんて分からなかったし、かりに対処を施したとしても手遅れだったかも知れないから、仕方がなかったということを主張しているわけです。
 
※ なお報告書「第2」には死亡した男性の身分事項や退去強制の理由(彼が刑事事件で実刑判決を受けたことも含めて)が記されていますが、しかしそうしたことは、彼の死にかんする入管当局の責任という問題にたいしてはまったく無関係です(刑事事件を犯していたので同情には値しないとでも言いたいのでしょうか?)。それゆえ、この箇所については報道で明らかになっていること以外のプライバシー情報を隠しています。


収容者の医療アクセスの妨害は構造的な問題だ

 しかし報告書は問題をごまかしています。本当の問題は、男性を救命できたかどうかということ以前に、医療の専門家ではない人間たち(入管職員)が男性の容態を勝手に判断していたことです。男性は死亡の数日前から痛みや苦しみを強く訴え続けてきたにもかかわらず、その訴えを職員たちは聞き入れませんでした。報告書によれば、3月18日にはすでに男性が苦しみ悶え意識朦朧になり、失禁も確認され、その後、死にいたる24~25日までに、頭痛や苦しみを訴え続けています。この約8日間に、男性が医者に診せられたのはたった一度だけ(21日、収容施設内の非常勤医師)です。この医師は、そのさいの診断でくも膜下出血を発見できなかったのは仕方ないという主旨の報告をしています(5頁)。しかし、それよりもっと深刻な問題が、この報告書ではうやむやにされています。すなわち、この一件を除いて、8日間、医療知識のない入管職員たちが、男性に勝手に医療措置を施し、勝手に症状を判断しつづけたということです。たとえば23日には、職員たちは、頭痛薬の投与やバイタルチェックをおこない「直ちに病院搬送を要するとは考えなかったものの容態観察を行う必要があるものと判断し、本人を休養室に移室した」(4頁)と報告されています。この点を当局が問題として認識していないこと自体が問題ではないでしょうか。

 入管職員が収容者の容態を勝手に判断し、なかなか医師に診せないのは、それを職員たちが「詐病」という先入観で見ているからに違いありません。体調不良を訴え、医師の診断を希望しても、職員は「大丈夫だから」「落ち着いて」「放っておけば治る」などと言ってごまかし、よほど容態が深刻にならないかぎり対応しないことが通例となっています。たとえば、ある東京入管の収容者は、昨年11月半ばから深刻な喉の異常(つねに苦しく、就寝中には呼吸が止まり苦しくなって目が覚めることがある)を訴えるも放置されつづけ、今年2月になってようやく病院に連れていかれ、百日咳と診断され、その後ようやく回復に転じるも、いまだ完治には至っていません。「詐病」という蔑視をふくんだ先入観を職員たちが共有しているからこそ、つねに収容者の医療は遅らされるのです。そもそも迅速な医療へのアクセスを保障できないなら即時に収容を解くべきでしょう。

 以上のことから、収容者の医療アクセスの妨害は、無期限の収容をはじめ、日本の入管収容の制度そのものに内在する構造的な問題と言えます。


再発防止?

 報道によれば東京は「今後、収容施設と医療機関との連携などを強化する方針」だそうです(小松隆次郎「入管収容中のベトナム人死亡 頭痛訴えるも専門検査なし」朝日新聞デジタル、2017年12月5日)。実際、面会での聞き取りによると、今年に入った頃から牛久入管では収容者の健康診断をおこなっているようです。

 しかしこれを収容者の生命と健康への真剣な配慮として評価することはできません。せいぜい、入管当局にとっての予想される面倒なトラブルへの予防措置といったところでしょう。本気で再発防止に取り組むならば、今回、男性を放置した職員およびセンター所長を処罰すべきです。またそもそも、収容者の健康悪化の最たる要因である、無期限の収容をやめねばなりません。

 したがって、この報告書は当局の責任をあいまいにするための文書にすぎない、と結論づけるべきでしょう。



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by p-dragon | 2018-03-31 00:25 | 収容への抗議  

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