【声明】深まる難民危機──日本は何をするべきか

いま報道されている難民危機に際して、わたしたちSYIは声明を発表します。
並行して、以下を実施します。ぜひお集まりください。

 シリア難民に話を聞く会 10月4日
 日本も難民を受け入れよう! デモ 10月11日

(10月14日追記) 以下もお読みください。
【パンフレット】 日本も難民を受け入れよう!

---


深まる難民危機──日本は何をするべきか

2015年9月15日

PDFで読む


トルコの砂浜に、小さな亡骸となって漂着した3歳の男の子の名前は、アイラン・クルディくんといった。シリアの町、コバニでの「イスラム国(IS)」との戦いから逃れてきたクルド人の子どもだった。

トルコからギリシャを目指した小さな船は、高い波にあおられて転覆し、アイランの母親も、5歳の兄も命を落とした。心ある人があの写真を目にすれば、きっと衝撃と、やり場のない悲しみを抱かずにはいられないだろう。

今はまずアイランと、地中海の波の下に消えていった人々のために、祈りをささげよう。



あの写真は、ヨーロッパおよび世界全体で、難民受け入れの拡大を求める世論を活発化させた。報道によれば今、シリアから脱出した難民がヨーロッパに34万人、その他の国には375万人もの難民が、あてどなくさまよっている。日本に住む私たちも、これを対岸の火事として傍観しているわけにはいかない。だが、たんに「日本は○○人の難民を受け入れろ」などと主張するだけでは何の意味もない。日本には、難民受け入れの実態において、ひいては国内の外国人への人権無視や、政府の外交政策という点においても、問題が山積しているからだ。


● 入管体制を根本的に見直し、難民条約にもとづく正当な難民受け入れを

私たちは法務省に対して、すでに日本に来ている難民を、またシリアをはじめとする諸国から新たに到着するであろう難民をただちに受け入れ、彼らの人権と、平和に生きる権利を保障することを要求する。

いま、世界各国から日本に対して「より多くの難民を受け入れてほしい」という声が聞こえてくる。しかし法務省・入国管理局は排外的な姿勢を崩そうとしない。たとえば、日本では2014年度に5000人の難民申請者がいたにもかかわらず、認定されたのはわずか11人。たった0.2パーセントしか、難民として認定されなかったことになる。シリア難民にいたっては、そのうち3人でしかない。「今後1年間に50万人程度の難民・移民を受け入れる」と発表したドイツをはじめ、ヨーロッパ諸国と日本の対応には、天と地ほどの差があると言わざるを得ない。

日本では、1981年に加入した「難民条約」にもとづく難民認定と、それ以外の出入国管理をセットにした「出入国および難民認定法」によって難民行政を行っているが、そもそもこれが大きな問題である。『好ましくない外国人を強制的に国外に退去させる』という目的を大前提とする入国管理局には、難民を受け入れ、定住を進める役割は果たせない。先に挙げたゼロに近い認定率は、この歪んだ制度の結果である。私たちは政府に対して、難民認定業務を法務省から明確に切り離して現在の入管を解体し、独立した「難民受入委員会」といった機関を設置して、積極的な受け入れを開始するよう求める。


● 武器輸出と海外派兵をやめ、平和的政策による関与を

私たちは日本政府に対して、中東の紛争をさらに煽るような武器輸出、そして、さらに広範な海外派兵のための立法や改憲の推進を、一切やめることを要求する。

難民問題は、戦争や武器の問題と直結している。いまシリア国内で起こっている紛争に責任があるのは、アサド政権や、ISを含む反体制勢力だけではなく、これらに武器を売り、資金を流す諸外国の企業や政府等も含まれる。したがって、まず必要なことの一つは、アメリカ、ロシア、ドイツ、イギリス、フランスなど、関係するすべての国が、シリアの各勢力に対する武器のセールスや、武装闘争への資金提供をやめることだ。

武器を売りつけて儲けながら紛争を煽っておいて、いったい何のための難民支援なのか。そんなことでは、「難民危機」とは国際社会、とりわけ先進工業国の偽善の結果だとしか言いようがない。

日本も無関係ではない。いま国会では、民意を完全に無視する形で安保法制が成立させられようとしている。だが、日本がアメリカ合衆国の好戦的な政策に加担することによって、このような紛争はさらに大規模になっていくだろう。

また、日本政府と財界は2014年に、紛争当事国や、そのおそれのある国への武器輸出を禁止する「武器輸出三原則」を破棄して、輸出解禁に踏み切った。平たく言えば日本は「武器商人=死の商人」になり下がろうとしている。かりに日本が難民受け入れを拡大したとしても、その一方で紛争地に武器を売り込んで紛争を焚き付けるのでは、先に述べた、他の先進工業国と同じ偽善でしかなくなってしまう。

武器によって平和を作ることなどできはしない。日本は難民受け入れをはじめとした、平和的、あるいは包摂的な政策によって世界の平和に貢献すべきである。「積極的平和主義」の名を騙る戦争政策は、日本人だけでなく、世界中の人々の命を危険にさらすだけだ。


● 「イスラム国」(IS)問題の根源であるアメリカの政策を、日本は支持するな

私たちはアメリカ政府に対して、中東への一切の軍事介入をやめるよう要求する。また日本政府に対して、アメリカとの同盟を放棄し、中東地域の混乱をもたらしてきたアメリカの外交政策へのあらゆる支援を停止するよう要求する。

ISを生み出したのは、アメリカが主導したイラク戦争と、シリア紛争への介入である。ISの前身は、アメリカの侵攻により不安定化したイラクで活動をはじめたアルカイダ系の過激派組織だが、シリアで紛争が始まるとISはそちらに参加し、諸外国から流れてくる武器や資金を吸収して成長した。その一方で、2014年にISが欧米諸国への敵対を明らかにするまで、アメリカはISを含むシリアのすべての反体制勢力を支援してきた。その目的はアサド政権の打倒であり、シリアの市民の権利や安全は実際には顧みられていない。このように、常にアメリカは中東地域の非・親米政権を倒して、権益を拡大しようと策動してきた。

中東におけるアメリカの同盟国も、軍事介入によって難民を増やすことに加担している。たとえばトルコは、アサド政権を取り除きたいという野心や、国内外のクルド人勢力への敵意から、それらを攻撃しているISにさまざまな支援を与えてきた疑惑がある。今年7月には、トルコは対IS空爆を開始したが、同時にクルド人勢力への爆撃を行うことで、紛争の状況をさらに複雑で解きがたいものにしている。

「アメリカがその原因であるにせよ、今のISを止めるためには、空爆はやむをえない」という意見もありうる。しかし、ISが、とりわけイラクで絶えず新たな戦闘員をリクルートできるのは、アメリカの占領に対するイラクの人々の恨みの深さがあるからだ。空爆は不可避に多くの非戦闘員を巻き添えにしてしまう。空爆の続行は現地社会の状況を悪化させ、ISへの支持はさらに高まるだろう。

そして、このように中東をめちゃくちゃにしたアメリカ主導の一連の介入に足並みをそろえて、日本が湾岸戦争以降、海外派兵を展開していったことも、忘れてはならない。日本はたんに軍国化しているだけでなく、中東の人々を踏みにじっている一員でもあるのだ。



今年に入り、すでに約2700人もの難民が地中海に沈んでいるという。日々、次のアイランが死に続けているということだ。このような状況を何とかしなければならない。だがそのためにはまず、現在の難民危機において、誰が、どのような責任を負っているのかを、はっきりさせることが必要だ。そして、政策を変えていくために、多くの人が、私たちとともに声をあげてくれるよう望みたい。


収容者友人有志一同(SYI)
呼びかけ人:  織田朝日 柏崎正憲 戸山灰 周香織 原田成人
[PR]

by p-dragon | 2015-09-15 21:05 | 声明・情報・考察  

<< Conference: A S... 11月に東京入管(品川)で被収... >>